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聖路加国際大学小児看護学教室教授
家族看護、小児看護を専門として、臨床では小児がんや医療的ケアなどの疾患のあるお子さんと家族に出会ってきた。研究では、慢性疾患を持つお子さんと家族が子どもから大人へと移行することへの支援をテーマにしている。現在は大学での講義や研究のほか、小児科クリニックでの臨床にも携わっている。
語りの内容
ーー経管栄養というのはどういうものですか。
経管栄養は、お口から食べて消化することが難しい時に使うものです。
喉には気管と食道がありますが、ごくんってした時に、気管の入り口の蓋が閉じて物が入らないようになる仕組みがあります。
その仕組みがいろいろな理由でうまくできないと、食べ物が肺のほうに行っちゃう。そうすると、感染症や肺炎になって、熱が出たり呼吸が苦しくなったりということがあります。
それが誤嚥性(ごえんせい)肺炎です。
嚥下(えんげ)機能という飲み込みの機能全体に何か課題があってもう少しサポートしたほうがいい時、今はお口からごっくんってしないほうがいい場合には、直接食道のほうに食べ物が行くように、チューブを通して、そのチューブの中を食べ物が通って胃や腸に行くように経管栄養をします。
ーー経管栄養の中で幾つか種類がありますが、どういうふうに選ばれるんでしょうか。
お子さんの状態によって選ばれるというのが1つの答えです。
まず、最初大体は、お鼻から胃に通す経管栄養だと思います。
鼻からチューブを入れて食道を通して胃までつなげます。もう少し長いものだと、お鼻から腸まで行く経管栄養もあります。
それぞれ少し特徴があります。
胃までですと、長さはまあまあある。
ただし、チューブを長く置いておくことができないんですね。
なので、ある程度の期間で入れ替えが必要になります。
腸まで行くチューブですと、結構、長く置いておくことができます。
長く使えるんですね。
けれども、長い分だけ、チューブを入れるのも大変ですし、入れられるほうのお子さんも大変だということはあります。
チューブをどう入れるかっていいますと、例えば大人が一時期使う場合、お鼻にチューブを通す際に、喉の辺りに来た時に、ごっくんってしてもらうんです。そうすると気管の蓋が閉じて食道のほうだけ通じるので、チューブを進めると食道のほうを通じて胃に行くんですね。
もちろん鼻にチューブが入るのでかなり違和感もありますし、喉のほうまで行くので、皆さんも耳鼻科とかでやったことあるかもしれませんけれども、うまく鼻の奥の穴に行かない時には突いちゃったり、鼻血が出たりもある。
とても痛いし、大変かなと思います。
ごっくんっていうのが上手でないお子さんにする時には、慎重にそれ(チューブ)を進めて食道まで入れないといけないです。
これが間違って気道に入ると、食べ物が気道のほうに行って感染症を起こすことになるので、そこは慎重にやらないといけないのも大変なところの1つです。
お子さんにとっては違和感もあるし入れる時痛いし、じっとしてなきゃいけない。
入れるほうにとっては、痛そうだなっていうのを頑張って押さえながら入れなきゃいけない時もあるし、ちゃんと入れたいところに入ってるかなっていう(不安)、そういう大変さもあります。
ーー胃ろうのほうが管理が楽と聞いたんですが、どういう違いがあるんですか。
管理は胃ろうのほうが楽なこともあるのではないかなと思います。
胃ろうは、胃のある辺りの皮膚の上から胃の粘膜の裏側まで、カフスボタンって想像していただいたらいいんですけど、上と下からカチンって、ちっちゃな穴を開ける、そういう仕組みなんですね。
鼻からずっと通ってチューブがあるわけじゃないので、手を引っかけたら抜けちゃう心配もしないでいいし、ちょっと抜けかけのチューブに食べ物を入れて、気道のほうに食べ物が行っちゃうかもしれないという心配をしないでいい。
管理も、チューブを定期的に換えたり、きれいにしたりという作業が、鼻のチューブにはありますが、胃ろうだとかなり長い期間そのまま置いておいて、そこに経管栄養のボトルをつなげるだけで使うことができます。
あとは、お風呂です。
胃ろうですと、お風呂も気にしないでそのままボチャンって入ることができます。
その後も特に肌が荒れていないのであれば、特別なことはしなくても大丈夫です。
経管栄養だとチューブを鼻とかにテープで留めなければいけないので、お風呂の後テープを貼り換えたり、肌荒れがないかを確認して、付けるところを変えたり、そういったところも違うところかなと思います。
ーー一度、経管栄養を実施すると、その先もずっと経管栄養になるんでしょうか。
必ずしもずっとそうなんだということではないです。
お子さんの状態を見ながら決めなければいけないので、絶対外れるとも言えないですし、ずっとしているとも言えないです。
発達とともに嚥下が上手にできていくお子さんもいて、もう上手に飲み込めるから経管栄養要らないねっていうこともあります。
一方、嚥下はできるんだけど必要な栄養量を全部お口だけで取るのは体力的に疲れちゃうかなという場合に、経管栄養も使うけれどお口でも食べようかという場合もあります。
小児看護学・小林京子さん
- 尿道から膀胱に直接管を通す導尿には、清潔な操作が必要である。訓練して中学生くらいから自力で導尿をできる子どももいる
- 腸に穴をあけ袋(パウチ)をつけて便を排出するストーマは、子どもでは素早いパウチ交換、ずれない工夫を行う必要がある
- 経口で栄養を摂取することが難しい場合に、鼻から胃や腸にチューブを通したり、胃に直接穴をあけて胃ろうを作ったりする
- 肺に酸素の供給が十分にいかない場合に人工呼吸器が必要となる。酸素が届いているか、血中酸素濃度を気にしながらの生活となる
- なんらかの事情で気管内を空気がうまく通らず呼吸困難となる場合に、気管を切開する。切開後は気管内のたんの吸引をし、空気の通り道を確保する必要がある
- 在宅で医療的ケアを行う家族は、生活の中で様々なケアがスムーズにできるよう気を配る。親たちの負担を軽減するサポートが必要だ
- 人工呼吸器、胃ろう、経鼻経管栄養、痰の吸引のような通常病院で行われるようなケアを日常生活でも必要とするお子さんのことです