学校の付き添い

医療的ケアがある子どもが通学する際、学校でケアのできる看護師を自治体などが配置します。
しかし、看護師を確保できない場合や、看護師が常駐していてもケアや介助の手技を引き継ぐために、親が学校に付き添いが求められたり、校内での待機が求められたりします。

学ぶ手段としての付き添い

特別支援学校には障害をもった子が通うことが想定されます。医療的ケアの必要な児童へのケアを行う看護師などの人材がいるのが理想ですが、実際には特別支援学校でも学校看護師ができるケアの範囲が限られています。
そもそも小児のケアができる看護師は不足しており、子どもの安全確保のために親の付き添いが要求されてきました。
教室でずっと付き添った方、学校の待機室で待機するように言われ家に帰ることもできず、親自身の時間がないのはもちろん、家事やきょうだい児の育児をする時間もなかった方もいます。

この方はお子さんが特別支援学校に入学した2006年頃の経験をお話くださいました。

人工呼吸器をつけていると持続的なたんの吸引が必要な場合や、子どもが手を動かした拍子に、人工鼻(保湿のための呼吸器のパーツ)やカニューレ(喉などに挿管した管)が抜けてしまうことがあるため、親が近くで安全を見守るように求められることがあります。
次の方は、そのような理由で親の付き添いを求められましたが、むしろ人工呼吸器がついているからこそ元気に学校に通えると証明したかったと語ってくださいました。

医療行為は、本来、看護師等が実施することが求められますが、在宅などで看護人材が不足し家族に負担がかかることを想定し、平成24年4月より一定の研修を受けた介護ヘルパーなどが一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになりました。この改正により、特別支援学校の教員による医療的ケアの実施も制度上可能となりました。
しかし、一定の医療的ケアが学校内で実施できることになったことで、医療的ケアがある間は親の付き添いが求められなかったのに、子どもの成長に伴い医療的ケアではなくなった場合に、学校の責任が持てないという理由で付き添いを求められたという逆転現象ともいうべき経験をされた方もいます。

学校での付き添いは親にとって負担もあったが、親がそばにいることで教員だけでは対応できない経験を子どもにさせてあげられた、学校での教員や他の子どもの様子を間近に見ることができ、教員や他の子との交流も深まったと語ってくださった方もいます。

学校での付き添いや待機時間は家に帰ることができないため、その時間を利用して、自らのスキルアップや、ヘルパーなどの資格取得の勉強にあてたという方、PTA役員を引き受けてその活動にあてるなど時間を有効に活用したという方が多くいました。
次の方は、学校での付き添いがあり看護師の仕事を辞めたそうですが、デイサービスでの付き添いのついでに自分も同じ施設で看護師として働くようになり、その際の発見についてお話していただきました。

学校での待機が外れても、緊急時の呼び出しに応じてすぐに学校に来るよう言われているため、事実上、自宅待機になっている方も多くいます。学校での医療的ケアのマニュアルも厳しく、融通が利かずになかなか付き添いが外れなかったという方もいます。

通常生活の学校内では看護師等によるケアがあっても、遠足や宿泊合宿、修学旅行など学校を離れた場や、夜間のケアには、親の付き添いや近くでの待機が求められることもあります。

付き添いが外れるまでのやり取り

学校看護師や教員への医療的ケアや介助内容の引き継ぎを行う期間は、親が付き添う必要があります。
しかし、年度変わりで担任の先生が交代すれば新学期から改めて親の付き添いが求められます。
また子どもの成長や心身の状態の変化に伴い、実施されるケアの内容が変われば医師の指示書も変更されるため、その都度また親の付き添いや待機が必要となります。
付き添いや待機期間を外れるまで、どのようなやりとりがあったのでしょうか。

学校では看護師を中心に研修を受けた教員も一定の医療的ケアを行うことができ、その行為は大きく喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)、経管栄養(胃ろう又は腸ろう・経鼻経管栄養)、導尿の3行為とされています。
学校で行うことができる医療的ケアには、人工呼吸器が入っていないため、人工呼吸器を装着した子どもも安心して学校に通える環境が現在も求められています。
国全体としてのガイドラインと連動し、都道府県や特別区単位で学校看護師を派遣する予算を確保し、学校内で提供できる医療的ケアの範囲を拡大しようとの動きもあります。

親から学校の看護師や教員への医療的ケアの引き継ぎの期間は半年程度かかることが多いようです。学校での付き添いや待機の拘束時間が長いため、親(とくに母親)は子どもの就学と同時に仕事の継続を断念したり、家事やきょうだい児の子育ての時間が大きく圧迫されていると感じたりしています。

2023年7月公開

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