このたびの地震で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
よりによって元旦に能登半島を襲った地震により、非常に多くの方が今でもご不便を余儀なくされていることと存じます。
私どもDIPEx-Japanでは昨年7月に公開した「医療的ケア児の家族の語り」で、「緊急時・災害時の対応」というトピックを取り上げています。
これはどちらかというと、災害に直面した困った経験についての語りを、平時に見ていただいて次の災害に備えることを目的としたウェブページです。
現在災害の渦中におられる方向けというよりは、今回の震災で不安を感じておられる全国の医療的ケア児のご家族に見ていただければと思います。
さらに、DIPEx-Japanでは、2011年の東日本大震災の後に、身近な人を突然に失った方の心のケアに関連する、英国DIPEx(www.healthtalk.org)の語りの翻訳版を公開しています。
「英国人の喪失体験の語り」というこのウェブページには、自然災害による死別体験は含まれていませんが、身近な人を不慮の事故で亡くされた方の語りが紹介されています。
そこでは悲しい知らせを受け取った時の思い、ご遺体との対面、周囲の人々から得られた支援、さらには日常生活に戻っていく中でも時折よみがえる喪失感などが、赤裸々に語られています。
周りに同じ体験をされた方がたくさんおられる場では、なかなか自分の率直な思いを吐露することができないことも考えられます。
他者の語りに触れることで押し込めてしまった気持ちを解放するきっかけがつかめるかもしれませんし、どう接したらよいかわからないという周囲の方も何らかのヒントが得られるかもしれません。
一つだけ印象的な語りをご紹介します。
テロ事件で弟を亡くしたスザンナさんという女性が、毎年、弟の葬儀が行われた12月23日が近付くと、周囲がクリスマスや新年のお祝いで浮かれている中、弟がいないことを思い知らされるようでととても辛くなる、と話しています。
スザンナにとってクリスマスは毎年辛い日だそうです。というのも、弟の葬式が12月23日だったからです。クリスマスと新年はどちらも大変心が痛むと語っています
災害によって親しい人を亡くす悲しみはいつ起きても同じように辛いものと思いがちですが、この語りを読むと、改めて今回「元旦」という特別な日に地震が起こったことの残酷さに気づかされます。
喪中となる2025年のお正月だけでなく、この先のすべてのお正月が2024年の出来事を思い出させるのだとしたら、「おめでとう」という言葉がすんなり出てこなくなるのではないかと心配になります。
今後、このようなことについてのグリーフケアの専門家の方々によるアドバイスがいただけるとありがたいと感じました。
以上をお読みくださった皆様、ぜひ情報の拡散にご協力ください。
そして被災地の一刻も早い復興をお祈り申し上げます。
2024年1月12日
DIPEx-Japan事務局 佐藤(佐久間)りか