研究事業名 | 平成19~21年度厚生労働科学研究がん臨床研究事業 |
研究課題 | がん患者の意向による治療方法の選択を可能とする支援体制整備を目的とした、 がん体験をめぐる「患者の語り」のデータベース |
研究代表者 | 和田恵美子(当時・大阪府立大学看護学部) |
研究体制 | 下記別表 |
研究の概要
本研究は、インタビュー調査を通じて集めた「がん患者の語り」のオンライン・データベースや、「がん患者の語り」のデータを用いた学術研究・医療者教育が、患者の置かれている社会的状況や患者の意向を患者と医療者の双方が共有し、本人の意向を十分尊重したがんの治療方法等が選択されるようながん医療提供体制の構築にどのように貢献しうるかを探ることを目的としたものです。
英国における先行例(DIPEx)の調査から始まり、データ収集に関わる調査者のトレーニング、インタビュイーの安全確保と情報の質の担保のための専門家委員会の編成をした上で、メディアや患者会、医療機関等を通じて調査協力者のリクルートを行ないました。
最終的には乳がん51名・前立腺がん49名分のがんの体験を、200時間を超すインタビューにより収集、そのうちの乳がん43人分のデータ分析に基づいて、26個のトピックに関連した語りの400個以上(12時間超)の語りのクリップを抽出し、データベース化して患者や一般市民向けにインターネット上に公開しました。
また、語りのデータを医療者教育や新たな学術研究に活用する可能性を探る研究を行なったほか、データベースの質や安全性を探る評価研究として、インタビュー映像の分析やインタビュアーへの聞き取り調査、インタビュイーへの質問紙調査なども実施しました。
その結果、我が国においても、「がん患者の語りデータベース」を安全に構築し、患者に有益な情報を提供したり、医療者教育に活用したりすることが可能であることを確認できました。
しかし、これが本人の意向を十分尊重したがんの治療方法等の選択につながりうるか、また学術研究に有用なデータアーカイブとなりうるかを判断するには、このデータベースの存在が人々の間に浸透するための一定の時間と、より詳細な評価研究が必要であると考えます。
研究体制
区分 | 氏名 | 所属・職(専門) |
研究代表者 | 和田 恵美子 | 大阪府立大学看護学部・講師(基礎看護学) |
研究分担者 | 中山 健夫 | 京都大学大学院医学研究科・教授(健康情報学) |
研究分担者 | 杉山 滋郎 | 北海道大学大学院理学研究院・教授 (科学コミュニケーション) |
研究分担者 | 朝倉 隆司 | 東京学芸大学教育学部 教授(養護教育) |