投稿者「dipex-j」のアーカイブ

英国人の前立腺がんの語り

ブラキセラピーの経験について述べる

そうさ、シード療法または小線源治療(ブラキセラピー)をするには、何をおいてもアメリカから実物のシードが届かなきゃ話にならない。その会社がシードを作っていたからね。何年も前は大手の国民保健関連会社の一つだけが全米でそれを作っていたんだ。シード線源にはパラジウムとヨウ素と2種類があって、ヨウ素は強度が半分だから長持ちするけど(パラジウムより効き目が)弱いんだ。だから(パラジウムと)同じ放射線効果を得るには2倍の期間続けることになる。シードはアメリカから取り寄せなければならないし、シードの埋め込みに適していると診断されてそれを告知されると、治療の一つとして超音波を使って実際に前立腺の大きさを測って、そのサイズに応じて何本シードを入れる必要があるかを決めるんだ。シードは前立腺全体に均等に配置されなきゃならないからね。前立腺はクルミのような形をしている。実際アメリカには、自分たちが前立腺がんであることを示すために、リボンのついたクルミ型のバッジをつけている人もいるよ。私の場合それ(前立腺の大きさ)を計算したら62本のシードが必要で、シードを作るアメリカに(そのデータを?)送って、それからできあがった(線源が入った)シードが送られてきて、事実上の予約がとれる。そのシードが届いたのは1~2日前だよ。

英国人の前立腺がんの語り

自分が受けた治療について述べ、副作用についてもっと伝えて欲しかったと言っている

ブラキセラピー(brachytherapy)のプラキ(brachy)という言葉はギリシャ語の「新しい」という言葉から来たもので、therapy は「治療」という意味だから、つまりは「新しい治療」ということなんです(訳註:この患者は誤解している。Brachy-の本来的な意味は「短い」の意、したがって小線源「近接照射法」が正しい訳語)。この用語には何も悪い意味はありません。実際の内容は、前立腺の中に放射性ヨウ素のシード(種)(訳註:小さなカプセル状の線源)を注入して、ある期間にわたって、およそ3ヶ月ほどですが、がんを破壊するものです。
注入は非常に正確に行われます。超音波装置で何度か部位調整を行って、洗っても消えないインクで小さな入れ墨の目印をつけます。注入は会陰(えいん)部――だと思うけど、そう呼ばれる場所――に行われます。それは肛門と陰嚢の間にあります。いくつかの穴が造られ、シードは正確に前立腺の中に等間隔で残置されます。この間、肛門に入れた超音波装置でシードが確実に前立腺内にあることを確認します。こうすることで、失禁や性機能に関係する神経の傷害を起こす可能性は皆無ではないにしても、起こしにくくなります。
この治療法の副作用のパーセンテージは非常に低いものです。一方、(通常行われる)アーク照射放射線療法では、ビームは前立腺以外の外部組織にも5%くらいは、明らかにかかっており、それが患者の感受性によっては重大な障害をひきおこすことがあるからです。私の場合、6週間前の治療の時には排尿に問題がありましたから、かなりこの感受性が高いようです。もっとも時間と共に改善しつつあり、先生は長期間にわたる問題ではないとほぼ確信しておられます。私は過敏だと思うので、比較的長期の放射線療法を受けていれば問題になるだろうと思っています。
超音波で決めた刺青による小さな消せない目印のおかげで、近接照射法治療を非常に正確に行うことができます。私の場合、一層の正確を期して、左右両サイドとお臍の下に前立腺の上端部につけられました。こうすることでどんな配置の治療も可能になります。シードがどこにあるか正確に確かめるために超音波を受けました。数分でトンネル内の寝台にのせた患者を寸分違わず中心に来るよう調整し、正しくその位置で超音波をかけることができるのです。
どうするかというと、日曜日に病院に行き手術の準備をし、食事だけは禁止です。私の場合は、月曜の朝に手術を受け、翌火曜日の昼食時には帰宅していました。ただひとつ、先生方は不快感があることを患者に告げるべきだと思います。そう告げないことで先生方が悪いとは申しませんが、人によっては全く不快です。しかしながら、全く無反応な人もいます。これは他の治療においても同じでしょう。放射線療法がうまくいかない人もいます。前立腺を毎日絶え間なく焼かれていることを忘れてはなりません。これは何度も日光の下で毎日毎日皮膚を焼いて、日焼けをするようなもので、当然のことながら症状は悪化します。だから、そうなった症状は可なり明らかで、自分がそう思うのであれば、先生から実際的なアドバイスを受けられ、問題点について話し合えるし、いつでも支援情報サービスがありこれを利用するよう勧めてくれるし、これはとても良いことだと思います。私も何度かこのサービスを利用したことがあります。それはパニックに陥った時ではなくて、非常に気分がわるかった時ですが。
肛門内超音波検査を受けたり会陰部に注射をしたりするときには全身麻酔をします。 その後は、かなり不快感がありましたよ。立ったり座ったりするときに不快感があるのですが、奇妙なことに、擦り傷も、刺し傷も全く気づかなかったし、再診で先生のところへ戻ったときも「おや、ずいぶん良くなってますね」と言われました。そのとき以来、傷のことなんて全く意識していませんでした。もし意識していたとすれば、小さな注入孔が沢山開いていると思ったはずですが、全く考えたこともなかったのです。何か非常に腫れているように感じたのは、座るときに不快感を感じたためだと思います。でも、今は6週間後ですが、不快感はなくなりました。それまで優に4、5週かかりましたよ。最初の2週間はものすごく痛かったのですが、それから次第に痛みはなくなりました。
どんな手術でも治るまでには時間がかかります。放射線療法でずっと焼かれ続け、治療は続けられているのですからね。照射量が少なくなるにつれ治癒力は明らかに改善されます。放射線量は6週間から2ヶ月までが最も強いと思うのですが、3ヶ月間、できればもっと長期間、小さい子供や妊婦にはできるだけ近寄らないようにと医者は注意します。ですから、3ヶ月間は放射線が強く作用しているのです。でも、空港(のセキュリティーチェック)では警報はまったくならないよと、はっきりと言われましたね。(笑い)

――手術後のことで、何か他に言っておきたいことはありますか?

はい、あります。それは尿が出るようになると帰宅が許可されますが、出ない場合は最大10日間まではカテーテルを用い、通常、その後は帰宅が許されて、普通の生活ができるようになるのだと先生には言われました。術中つけていたカテーテルは術後にはずされ、以後はつけずに済んだのはとても嬉しいことでした。カテーテルをしていないので排尿の回復はずっと早いと期待していました。

英国人の前立腺がんの語り

放射線療法の過程について説明し、他の人達にアドバイスしている

起こったこと(前立腺癌)に対して、私が次に直面したのは27~30回におよぶ放射線治療でした。治療をうけるのは大変なことでした。最初にお腹に小さな点をつけ、機械を起動するたびにこの目印を見つけられるようにします。固定された身体の周りを機械が動き始め、機械が目印をみつけ治療が始まります。部屋には一人ぼっちですけれど、窓越しに看護師がいるのが見えますから、全く心配することはありません。看護師は本当に親切で助けになります。放射線治療を受けるときには、必ず誰かしら必要となると思います。というのは、治療後には運転なんかができなくなるからで、100ヤード(約90m)を歩くことすら大変なことです。1997年には疼痛治療の医師のもとに通院し始めたのですが、このときは、いずれあなたも経験するでしょうが、モルヒネ錠などを服用し始めました。放射線治療に話を戻すと、どういうものかを説明するのは非常に難しいですね。とても憂鬱になり、負担も大きいのですが、うっかり「あぁいやだ、もう止めてしまおう」なんて口走っても、止めるべきではありません。止めたところで問題が残るだけなのです。

英国人の前立腺がんの語り

治療を工場のコンベアーベルトになぞらえている

たしかにちょっと工場のような感じでした。「はい、この人が次、この人が次・・」っていうような。カルテをざっと見て、患者を台に乗せ、装置を点検して、身体にマークした刺青に合わせてきちんと位置取りができているか、その他諸々を確認します。というのも、技師たちは患者の側面に刺青をいれて、それに合わせて照射機器をセットし、患者を照射室に残して、出て行くわけですから。でも、まぁ仕方ないですね。患者一人ひとりの気持ちに沿うなんてとても難しいだろうし・・、本当に工場のようでした。すぐに取り掛かれるように準備ができていて、大体いつも一度に4、5人がその場にいたように思います。

英国人の前立腺がんの語り

治療について述べ、それは非侵襲撃的で痛みを伴わないと考えている

処置自体は痛みもなく、侵襲もありません。以前スキャン検査の時に述べたような装置に横たわるだけです。もし、放射線治療を奨められるなら、間違いなくスキャン検査を受けるし、これで放射線治療を行いたい部位を選び出し、指標として2箇所か3箇所に針を刺して入れ墨をします。入れ墨は一生残る緑色の小さな点で、お腹の上で前立腺のある場所の両側の各1点と下側の1点に付けられます。治療の際には2本の赤いビーム光線が入れ墨した点に焦点を合わして基準点を知り、照準を決めます。治療機器は、処置したい点に正確に焦点が当たるようにコンピューターによりあらかじめプログラムされています。後でわかったのですが、処置したい領域だけでなく、安全のために、それを越えた周辺部位にも処置を加えていました。

英国人の前立腺がんの語り

放射線療法は比較的単純明快な手法だと結論づけている

一週間後にレントゲン技師に会った場所に行きました。 そこでは台の上に寝かされたんですけど、技師はスキャンを見ながら小さな針を取り出して「今からすることなんですけど、一生残る刺青を入れますね、だけど、本当に小さなものですから」と言って、太腿の外側と反対側に一つずつ、もう一つはちょうどペニスの上の、陰毛の部分に刺青を入れました・・・・見えないと思いますけどね(笑い)、でも、まぁ、はっきりと分かるようにマークしました。その後 「はい、終わり、これで放射線治療のための準備は終わりました。治療は毎週月曜から金曜まで六週間行います。土日は休診のため治療をしませんのでお休みとなります」と技師から言われました。それから放射線治療を受けましたが、それ以外はとりたててお話することはありません。

――治療について何かお話してくださいますか?

はい、もちろんです。そこは放射線科で実に大きな医療機器がある部屋に通されます。 部屋の前に座っていると名前を呼ばれて部屋に入っていきます。 部屋には三人ほどの看護師さんたちがいて、「ズボンを少し下ろして、架台というんですかねぇ、まあ、そこの上に乗るように」と言われました。もう少しズボンを下ろすように言われ、青い布がかけられました。 「2、3分かかりますが、私たちは部屋の中に居れませんので外に居りますが中の様子は見ております」と看護師に言われました。それから「三回長いブザーが鳴ります」と言われて、そのあと、治療用の機械が私のところに移動して来て左から右へ回り始め、先日マーキングした大腿部に到達するとブザーがなりました。音だけで光線や放射線らしきものは見えませんでした。音だけです。それが 私の体の真ん中辺りで上下して、その次にまた一方で音がして、それからまた反対側でもう一回音がしました。3回の放射線は前立腺の腫瘍がある1点に集中するのだということでした。

――どのようにして看護師さんたちは あなたに 動かないように指示したのですか?ただ動かないで横になって下さいとか言われただけですか?

はい、動かないでじっとしていてくださいと言われただけで、何かに縛られたりはしてません。手を体の両側の下に置いて横になって“イギリス国家”のことなどを考えたりしてました。(笑い)

英国人の前立腺がんの語り

照射のプロセスについて説明し、治療は無痛であると言っている

実際の(放射線)治療の一週間前に病院へ行き、「タトゥー」(刺青)と呼ばれるマークをつけました。実際の治療時間を短縮するためにするものです。機械がセットされるとチクッと針で刺すような感覚があり、つけられたタトゥーは生涯ずっと残ります。前立腺ガンの場合、左右の腰部に一ヶ所ずつとへそのすぐ下にします。皮膚に染料を注入して、治療の際にテーブルに横になるとそのマークに合わせて機械が調整されるのです。そうすれば、毎回治療の度に測定して機械をセットしなくてもすむわけです。数値はすべてコンピュータに記録されていて、ベッドに寝て足をストラップで固定されると、まず右の腰部そして左の腰部、次に前方から照射されるのです。時間にすると3~5分くらいですが、私の場合は毎週月曜と金曜、計20回この治療を受けました。治療自体は、痛みは全く感じませんでした。

英国人の前立腺がんの語り

手術が非常に技術的になり、正確になったことを説明している

実際の放射線療法では、ただ横になっているだけなんです。ビームを焦点に合わせ、施術はとても正確で、赤外線ビームらしいのですが、これでマーキングするのです。それが赤外線かどうか確かではありませんが、少なくとも赤いビームです。もし赤外線なら、熱を発するでしょうね。ともかく、術者たちはビームでマーキングすると、私の身体をきちんと固定させて、2分間位はそのまま静置し、それから3ヵ所に照射が行われます。左手側の前立腺に対して、厳密には中央部分、ペニスの真上です。それからペニスの約3インチ上部、そして右手側の3ヵ所です。これはまさに、精密技術と言っていいでしょう。
時間は約2分間で、自分がやることといえば、ただ横になって退屈して、クリックの音を数えるだけですよ。私が音の時間を計ろうとしたら、先生がこれは時計の秒針の音ではなく、照射中であることを知らせるクリック音だと説明してくれました。
(照射が始まると)皆部屋から出て行ってしまうので、自分がそこに居るべきなのかどうか、完全に判らなくなります。それで私は、自分が照射を受けているものを皆が避けたがるのはどういうことなのだろうと考えてしまいます。皆は出て行って、外部から私をモニターで見るのです。でも、セットアップしてしまえば後は機械が自動的に働いて、3ヵ所の照射は自動的にやるんです。自動的だと思いますよ。外部から操作しているとは思えません。ですから、それはとても正確だし、非常に技術的な作業ですばらしいものだと思ってます。

英国人の前立腺がんの語り

彼にとっての唯一の不便さは、放射線療法が非常に時間がかかることだった

放射線治療のプロセスは・・・・、この治療の唯一不便なことは6週間半も掛かることですね。月曜日から金曜日まで6週間も続けて病因に通わなければならないし、更にそれからなんだかんだと更に3日も通う。この間出来ることは限られてしまう。病院については、予約を取らなければならないし、時間もかかります。10分から15分くらい待たされました。 放射線治療処置室に入って出てくれば、それで終わり。処置室にいる時間は20分からせいぜい30分でしたね。

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治療がとても効率よく行われていると感じた

他の患者さんと知り合いになったりもしましたよ。 私は地方議会議員なんで議会関連の書類を持っていきました。
人と話すのがちょっと億劫な方なんですが、みんなはよくある机の上の古い雑誌を手にとっておしゃべりをしてましたよ。 お天気のことから政治の話までね。一人ぽっちでいるのでなくて、それはいいことですよ。すべてスムーズにうまく能率よく進んで文句をいうことは一つもありませんでした。退院する時はチョコレートをお礼にあげました。とてもよくしてもらいましたから。