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英国人の前立腺がんの語り

女性ホルモン剤を使うようになってから,ものごとに対する姿勢が変わったと述べている

――男性として、女性ホルモン投与の治療を受けることをどのように感じましたか?

ひどい気分でした。自分の男らしさなんて無くなってしまうのですから。ホルモン療法が始まれば性的欲求どころの話ではありません。ただの取り乱した小僧同然です―すみません、他に適当なことばが思いつかないもので。ひどい振る舞いをして、自分はこんなふうではない、これは自分ではないと思うのです。さっきも言ったように、キレたり、怒鳴ったりして、人生が一変します。一緒に暮らす家族などへの態度が変わって、彼らを避けたくなります。それはおそらく、男性ホルモンがなくなって、見知らぬ他人が自分の身体に入ってくるせいなのです。前立腺ガンの成長に男性ホルモンが影響するというので女性ホルモンを投与し、治療の第一歩としてガンの成長を抑えてから、私の場合は放射線療法へと進んだわけです。

英国人の前立腺がんの語り

治療後の性生活への影響について論じている

――注射の副作用について少しお話していただけますか?

これはまた語るのは簡単ではないのですが、つまり、私は完全にインポテンツなのはもちろんですが、もっと悪いことに、性的な事にはすべて嫌気を感じるのです。

――そうですか。

例えばテレビでは直接性的なことではなくても、それに近いものは避けられないんですが、見るのはとても嫌なのです。私は思うのですが、この国は確実にかなり速いペースで悪くなっていっています。私としては自分ではそれを楽しんできたし、妻も素晴らしいセックスライフだったことを確認してくれると思うし、悩みみたいなもなはまったくありませんでした。しかし、今は自分がインポテンツだと思うと、あなたには分からないでしょうが、これは心理的な影響を与えるものだと思いますよ。今じゃその種のことすべてが本当にムカつくのです。

――それはどんな気持ちにさせるのですか?こんな風にしなければよかったですか?

ええ。自分が男らしさというものを全て失ったように感じるのです。もう男じゃないんだって。仮に妻と歩いていたとして、私は最近とっても歩くのが遅いのですが、誰かが妻に声をかけてきたら、私は逃げてしまう感じです。男らしさなんて残ってないのです。

――それは、どんな感情になりますか?

ひどいものですよ。これははるかに悪い副作用だと心底思います。

――他の男性が、あなたがそのことでどんな気持ちになるのかを知ることが重要だと思います。

ええ。最も大事なことだと思いますね。これらの注射の副作用はいつも確実に起こりますからね。

――奥さんはそのことについてどう感じていますか?奥さんとの関係に影響を及ぼしていますか?

ええと、分からないですね。非常に面白いことに、女性はこういうことって話さないのですよ。私は怖くて聞いてません。彼女は私のインポテンツのことを堂々と受け入れています。でも、もちろん私はそのことが心配なのです。つまり、またざっくばらんにお話しますが、妻の姉妹はアメリカに居て、彼女と旦那さんがやってきました。旦那さんは「ああ、君はもらって来なきゃいけないよ。」「そう、バイアクラだよ。病院に行けよ。病院に行け。」と言うのです。私は神経質になってなかったし、そんなこと考えもしなかった。でも、お分かりのように彼が言ったことは私の気分を害しました。妻は私より9歳年下ですし、それは彼女にとって重要なことかもしれません。私には分からないけど、聞く気はありません。私たちは非常に親密な生活を楽しんできました。タバコはやめましたけどね。

――そうですね。それがとても辛いことなのは分かります。

そうじゃないんです。自分がもう夫としての機能を果たしていないことが気がかりなのです。

――あなたはきっと他のたくさんの事で奥さんを満足させていると思いますよ。

そうですね、彼女が「誰か来ますよ。あなた、ホールに掃除機をかけなくては」と言いました。私は、妻が外出中している間にやりましたよ。

英国人の前立腺がんの語り

インポテンスになっても妻との関係は変わらなかったと語っている

――ホルモン療法は性生活に影響しましたか?

いえ、まったく。

――治療前後で何か変化はありましたか?

手術後、もちろん性的欲求を失ってはいませんが、治療を受ける際、医師は私に言ったんです。『あなたはインポテンスになる可能性があるため、インポテンスについてあなたに伝えておかなければなりません。』と。しかし、私は70歳です。年齢を考えれば、インポテンスに関して心配していません。実際、夫婦生活になんら変化はありません。これは、70歳になると夫婦生活が終わるのではなく、ただそれ以上の事が起こらなかったそれだけです。つまり、特に考えているわけではなく、ただ良い関係を築けているのです。性生活はありませんが、愛情のある関係です。

英国人の前立腺がんの語り

根治的前立腺摘出術後,インポテンスをどのように受け入れたかを説明している

――それから、手術後に何らかの性機能への影響があったか伺ってもよろしいですか?

はい。当初私達は、私達と申しますのは、妻と私がうまくいったかどうかはともかく、なんらかの性的な体験があったことをとても良かったと感じています。しかし、実際には限界があり、勃起も持続させることもほぼ不可能であるとそこから分かりました。だけど妻と私にとってそれは大した問題ではなく、したくないとかやめておこうとか、なんて言うのか受け入れることを学びました。でも後から付いて来たボーナスが全てだと思います。私達はここにいる、二人ともここにいる、それが私達、多分特に私にとって、前を向いて生きていく支えになっています。

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根治的前立腺全摘出術の後のインポテンスに対して,MUSEはよく効いているが,バイアグラは有効ではないと説明している

手術後一番の副作用は失禁で、勃起障害もありました。全然勃起しませんでした。患者はその事を知っておくべきだと思います。でも大きな手術でしたからね。いくつかやってもらえる事もあるし、私たちも二つ試してみました。とりあえずバイアグラを飲んでみましたけど効果ありませんでした。ある程度まで効いたのはMUSEというもので、ペニスに注入するんです。とても良く効く人もいますが、私には75%といったところで、まだ完全には解決してません。

英国人の前立腺がんの語り

根治的前立腺全摘出術後のインポテンスに対して、バイアグラは無効だったが、MUSEに対しては抵抗感があることを語っている

術後9ヶ月経過した現在、勃起不全の症状がありますが、症状は以前と変わりません。定量のバイアグラを服用していますが、全く変化がありません。勃起もしなければ、頭痛も火照り(ホットフラッシュ)もありません。

――開業医に簡単に処方してもらえましたか?

はい、私の経過を説明したところ、問題なく処方してもらえました。

――バイアグラを出してほしいけど、言えないと言うひともいましたが..

いいえ、まったく問題ありませんでした。最初に診断してもらった医師ではないのですが、同じ[病院]にいる医師に行き、どういう手術を受けたか、勃起不全の症状があると説明しました。彼は私のカルテを見て、「確かにこの手術を受けたのであれば、まずバイアグラを使ってみたらいいでしょう」と言われました。さらに量を増やしてもいいのかと思いますが、今のところ変化がないので、それ以上言いませんでした。気楽に考えていますが、正常な状態に戻れるに越したことはありません。勃起しないのにもかかわらず、何か感覚があるのは不思議です。性的刺激に対しての性欲等は同じなのですが、ただ勃起が起こらないのです。勃起していないのに、射精しそうな気がすることもあって、非常に不思議な感覚があります。この事態は残念ですが、悲劇ではありません。私の場合、バイアグラは効かないようだと最近、医師に報告しました。もう一つMUSEという治療法を処方されました。MUSEが何の略かはわかりません。小さいアダプターでこの薬をペニスに挿入する気にはどうしてもなれないので、今だにまだ使っていません。(笑い)冷蔵庫に入ったままです。

――それ(MUSE)は初耳ですね。

そんなことをしようと考えただけでますます勃起しにくくなるでしょう。非常に不快な思いをするであろうと予想されるので、MUSEを使うくらいなら何にもしないでおこうと思います。その薬をペニスに挿入すると、あまり時間が経過せずに、勃起が起きるそうです。とにかくそれを使うことを考えるだけで不快になるので、まだ使うところまで至っていません。トライはしてみましたが。

英国人の前立腺がんの語り

前立腺切除術を受けたあと最初の6ヶ月間は完全に尿失禁状態だったが、その後改善しはじめた

10月から翌年の4月まで失禁していました。いわゆる完全尿失禁でした。もちろんたやすく解決できる問題でしたが、気持ちの中では最前列に位置する問題でした。というのも私の着けていたオムツタイプのパッドは40分しかもたなかったからです。40分以内にパッドを交換しなければならないということは、買い物に行ったならば40分以内に車の中に戻れるよう車を駐車する必要がありました。(手術後)体力が回復してきた時、以前のように患者の診察をするようになりました。どの診察も40分以上続けないように、だいたい40分でおさまるように、気をつける必要があり、そのたびにパッドを取替えに行かなければなりませんでした。講演を行う場合には、こういった制約があったので、40分以上続けられませんでした。私は姿を消す理由をつくらなければなりませんでした。カクテルパーティーに行けなかったし、もちろん、映画やそういったものに行くのであれば、40分以内で終わるようにしっかり段取りをたてなければなりませんでした。手術をしたことは満足していました。尿失禁のことを知っていたら、手術を受けなかっただろうということは決してありません。尿失禁には困りましたが、この厄介な問題をどう扱っていくか長期的な計画を立て始めました。その当時、パッドの取替え間隔がとても短かったので、医師を続けるのは難しいと切実に考えていました。私の知人で、以前にコンサルタントの仕事をしていた親切な人が、私と同じ問題を抱えており完全尿失禁だったのですが、噂で私の尿失禁のことを聞きつけ、おしゃべりをしにやって来ました。尿失禁なんてたいしたことないさ、と彼は言いました。問題というのはどれもこれも太陽で解決だ。君はまず仕事を引退したほうがいいね、そしてスペインに可愛らしい中庭のある家を買って、日光浴するのさ、ただしトイレに10分以内に戻れる場所でね。冬はオーストラリアかニュージーランドに出かけて、そこで冬を過ごす、そしてクリスマスの時期にイギリスに戻ってくればいいのさ。彼の話にものすごく心を打たれました、きっと彼はコンサルタントとしてすばらしい仕事してきたにちがいありません、けれども私には、スペインに家を持つことや、1年のうち3、4ヶ月もオーストラリアで過ごすほどの経済的なゆとりがありませんでした。それで彼にこう言いました、来ていただいてありがとうございました、でも私はもっと現実的な方法を見つけたほうがいいのかもしれない、と。それから突然、尿失禁が良くなり始めました。

――尿失禁用パッドを購入するのは大変でしたか、あるいは簡単でしたか?

まったく簡単でした。パッドは大量に郵送されてきました。入院中に、パッドを扱っている事業所の番地を書き留めておいたので、そこに手紙を送り、定期的に荷物が届くようにしました。

英国人の前立腺がんの語り

ブラキセラピー後に彼の生活を妨げていた排尿症状を防ぐのにデトルシトール(一般名:トルテロジン)がどのように役立ったかを語っている

膀胱炎による一過性尿失禁のせいで、地区看護婦から手に入れられるオムツを1週間使用することを余儀なくされました。私の手術は99年の9月に行われたのですが、8か月経っても幾つかの排尿症状が治まりませんでした。非常に強い尿意ひっ迫や時折の漏らし、それに夜間頻尿で夜中に1回か2回のトイレ通いです。泌尿器科医にさらにアドバイスを求めると、デトルシトール(酒石酸トルテロジン)を処方してくれました。この薬のおかげで、電車で旅行をするときに支障を来たし始めた頻尿をコントロールすることができるようになりました。

英国人の前立腺がんの語り

プラキセラピー後に起こった当初の排尿問題からどのようにして自信を回復していったかを説明している

近接照射療法後、困ったことは何も起こりませんでしたが、ひょっとするとそれが起こるかもしれないとは感じていました。それでですね、非常に気持ちが悪く、痛みがあったので、先生に電話をしました。そしてそれ以来その先生に診てもらっていますが、これが一部の人が経験する副作用の一つなのです。私は膀胱にこのような痛みや排尿障害や何か他にすることが必要になるとすごく頻尿になりました。そして、このことは自信を失わせることになり、外出する気にならないのです。しかし、これは先週以降から劇的に改善され、殆ど正常に戻ると言えないまでも、確かに回復途上にあり、これは経験する徴候のひとつです。先生方は、私には先生方の経験はないので気にするのは当然として、気にしていません。先生方が正しいと確信しています。たとえ自分が心配しても今のところ先生は気にしていません。自信は徐々に戻ってきており、外出できます。

英国人の前立腺がんの語り

尿失禁に伴ういくつかの困った問題を避けるために思いついたアイデアを語っている

誰もがとは言いませんが、多くの前立腺ガン患者が抱える他の問題は失禁(尿洩れ)で、旅に出るときにはトイレットや休憩所の計画を作らなければなりません。これは最近SAPCA(スコットランド前立腺ガン支援グループ協会)で取り上げたことです。目下我々はドナーカードのような患者カード所持の可能性を検討しています。状況が差し迫ったときに付近の商店などに入ってトイレットを使用できるようにするのです。これは全く気恥ずかしいことで、他の多くの人達にとっても同じでしょう。このようなことは必要でしょう。小さなことですが、(尿洩れ問題は)正にガン患者を苛立たせることであり、この特別な状況におかれた患者達を助ける仕組みはまだないのです。