診断時:60歳
インタビュー時:60歳(2008年5月)

東海地方で妻と2人暮らし。定年を迎え、海外シニアボランティアになるために2007年秋に受けた健康診断でPSA値が9.1と出た。地元の開業医では3ヵ月後に再度受診といわれたが、不安になって泌尿器科の専門病院に行って生検を受けたところ、前立腺がんと診断された。手術件数の多い病院に転院して、2008年1月に前立腺全摘術とライナックを用いた放射線療法を受けた。妻も同時期に乳がんの診断を受けている。

プロフィール詳細

M.Mさんは、技術者として海外で働いた経験を生かして、退職後はJICA(国際協力機構)が募集している海外シニアボランティアとして技術指導に当たりたいと考え、2007年9月末、その応募のために健康診断を受けたところ、PSA値が高いことが発覚した。まったく自覚症状がなく健康にも自信があったが、インターネットで調べて、9.1というPSA値はちょっと危ないと思ったので、最初は地元の町医者を受診した。そこでは超音波検査と触診をしたが、「今は特に問題がなく、たとえがんでも前立腺がんは進行が遅いので心配は要らないから、3ヵ月後に再受診するように」と言われた。

しかし、病院に通っていたにもかかわらず、がんが発見できずに手遅れになった例を、インターネットで目にして不安になり、さらに相前後して健康診断を受けた妻が乳がんの診断を受けたこともあり、同年11月、泌尿器科の専門病院を受診して生検を受けることにした。その結果、12ヵ所から採ったうちの1ヵ所にがん細胞が見つかり、さらにMRI、CT、骨シンチをやった結果、転移はなく、手術で治せる初期がんということで、1月末の手術の予約を入れた。しかし、以前に看護師をしていた娘が「手術を受けるなら症例数の多いところで」と、病院側に交渉してくれて別の病院に転院することになった。

年間の手術件数が60件を超えるそちらの病院では早く手術をして欲しいと訴え、翌年1月4日に手術に決めた。手術を待つ間に生検のプレパラートを再検査したところ、12ヵ所採取したうちの12ヵ所すべてにがん細胞が見つかったと言われて驚いた。さらに手術の結果、グリーソン・スコアが9の低分化がんであり、前立腺の外への浸潤があったことも判明し、ごく初期のがんと思っていたのが、実は病期Cという進んだがんであったことに強いショックを受けた。浸潤に対応するために、ライナックによる放射線治療を勧められ、2.5グレイの照射を20日間(最初の2日だけ入院で、その後は外来で)受けた。

PSAの値は放射線治療の直後の0.047から、2ヵ月ほどで0.02以下に下がり、現在は1ヵ月に1度検診を続けているが、値は安定している。海外シニアボランティアは断念せざるを得なかったが、おかげで夫婦2人ともがんを見つけることができたのでJICAには感謝している。世の中では一般的に、前立腺がんは予後のいい進行の遅いがんだと思われているが、自分のような低分化がんは進行も早く危険なので、安易に考えないほうがいいと思う。

私は: です。

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