インタビュー時年齢35歳(2022年3月)
障害の内容:骨肉腫の手術後の肢体不自由
障害をもった年齢と職場:23歳、がんの専門病院・病棟看護師
現在の職場:がんの専門病院・退院調整部門の看護師

関東地方在住の女性。看護師としてがん専門病院の泌尿器科で働き始めた1年目に骨盤の骨肉腫と診断され、手術で骨盤を大きく切除し歩行障害になった。
術後の化学療法をしながら、入院前の病棟勤務に戻り、業務内容や時間について様々な調整をしながら車椅子で働き続けた。
6年経ったところで血液腫瘍科に異動し、そこでも後輩を指導するアソシエイトプリセプターやリーダー役なども務め、2年前からは退院調整の部署で働いている。

プロフィール詳細

がん専門病院の泌尿器科病棟で働いていた新卒1年目の夏ごろ、股関節を動かす時に違和感を感じるようになった。当初はそれほど気にしていなかったが、股関節の症状とは関係なく胃けいれんのような腹痛が2回起きた時に精密検査をしたところ、骨盤にがんが見つかった。
術前・術後の化学療法と、その間に放射線治療と手術をする標準治療を進めることになり、周囲や職場の人と話し合って、診断された病院ではなく自分が勤務しているがん専門病院で治療を受けることになった。

勤務先では、自分は看護師でいたいという思いがあり、当初はそこで患者として治療を受けることに抵抗を感じていた。
だが、自分の入院病棟と働いていた病棟が隣で、同僚が顔を見せてくれることもあり、また病棟の看護師も1年目の後輩ということで明るく話しかけてくれて、今思えば入院生活は辛いことばかりではなかった。
入院中は身体機能の変化と体力の衰えを強く感じて、看護師の仕事には戻れないかもしれないと思ったが、逆に入院したことで看護師の存在の大きさを改めて感じて、仕事に戻りたいという思いにもなった。
また一緒に入院していた同世代の患者さんと話をすることを通じて、自分だけではないという思いになり、自分なりに頑張ろうと気持ちを切り替えることができた。

手術で左の骨盤の大部分を切除したため、術後は、日常生活は外では車椅子を使い、部屋の中では松葉杖か伝い歩きをするような生活になった。
就職1年目に病気が見つかって治療のために長く休職しており、術前の化学療法と手術が終わった頃には休職できる期間が残っておらず、自動退職の一歩手前だった。
自分としても不安がありとても迷ったが、病棟の師長や主治医、両親が一緒に検討してくれて、車椅子を使って元の病棟で勤務をはじめ、1ヶ月働いたら、その後1ヶ月は休んで化学療法をするという生活を約1年間続けた。

復職直後は受け持ち患者を持たず、電話対応や入院時の説明など、座ってできることを中心に行った。
化学療法が終わってからは、師長の声かけもあって受け持ち患者さんを担当しはじめ、徐々に患者数を増やしていった。
外科病棟のためベッドやストレッチャーで患者さんを運ぶ仕事もあったが、物理的にベッドやストレッチャーと自分の車椅子がエレベーターに一緒に乗らないため、それは他の人に交替してもらった。他には患者さんの移乗(車椅子からベッドなどへ移動すること)などいくつか制限はあったが、物品の配置を工夫すると患者さんの清拭(体を拭くこと)なども行えるようになり、同期に遅れながらも1年目の新人を担当するプリセプターや病棟チームのリーダーなども担当するようになった。
方法は人と違うけれど、患者さんの安全を確保しながら、自分のできる仕事が増えていったように思う。

同じ病棟で6年間勤務したあと、血液腫瘍科に異動し、そこでもリーダーなどを行っていた。
前の病棟は病気の前からいた部署に戻る形だったので説明をしなくても自分のことが伝わりやすかったが、異動先では説明しないと伝わらず、自分で意識的にできることとできないことを周囲に伝えていた。
その後、2年前からは今後の働き方なども考えて退院調整を行う部署に異動し、退院後の生活を考える意思決定支援の仕事に携わっている。
退院調整の部署では、車椅子だからできないという仕事は全くない。病棟ではできないこともあったが、それでもこれまでの病棟での経験が積み重なって今の仕事ができていると感じる。

復職直後は、車椅子で看護師をすることを人からどう思われるのかという不安や、自分自身がサポートを必要とする身で人の世話ができるのかとも思った。
また、車椅子で外出すると心ない言葉を投げかけられたこともあり、職場でも不安があった。
しかし、師長や先輩、同僚などはとても温かく、自分ができないところをサポートしてもらい、逆に自分ができることは全力でやるという働き方ができた。
車椅子であることで、患者さんが心を許して話をしてくれるような出来事もあり、そういったことひとつひとつが自信につながっていったと思う。

これから看護師を目指す人には、行動する前に諦めるのではなく、まずはやってみることを伝えたい。
自分も、できないかもしれないという思いがあったが、やってみると案外できることもあったので、行動する前に諦めないでほしいと思う。
看護という仕事は、自分のがん体験もマイナスではないと感じさせてくれる、そういう仕事ではないかと思っている。 

私は: です。

(アンケート結果の扱いについては個人情報の取り扱いについてをご覧ください。)

認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。

ご支援
ご協力ください

モジュール一覧