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インタビュー時年齢:49歳(2019年4月)
障害の内容:視覚障害(全盲)
学校と専攻:大学・社会学部(1991年度入学)、大学院(1995年度入学)
関東地方在住の女性。小学校2年生まで普通学校に通い、その後中3まで盲学校。高校は普通学校に進学した。大学で一人暮らしを始め、盲導犬と一緒に暮らし始めた。大学院の時に、全盲学生で初めて東京都立の一般の高校で初めて教育実習を受けた。自分の母校の高校での実習はとても大変だったが、かけがえのない時間となった。現在は、全国的な当事者ネットワークである「全国障害学生支援センター」の事務局長をしている。
語りの内容
私のお友達がね、あの2つあって、1つは私に、私と出会ったきっかけっていうのが、その子がずっとそのことを言っていたんだけど、私がね、トイレの前で、トイレってあの屋外から入るトイレってあるじゃないですか。外から入り口があるトイレ。建物の中のトイレじゃなくて、キャンパスなので、じかにトイレがあるわけですよ。男性と女性が当然あるんだけど、どっちが男性でどっちが女性か分かんないわけですよ。で、うろうろ、うろうろしてて、ずっとうろうろしてて、で、その子が来て何か、「何か困ってますか」とか言って声掛けてくれたんです。
で、私当時、本当にシャイだったので、何かずっとしゃべれなくて固まってて、すごい緊張した顔してたらしいんです、真っ赤になって。「え、大丈夫ですか、具合悪いんですか」、いやとか言って、「どうしたんですか」、いや、トイレがとか言って、あ、トイレはどこでしょう…とか言って、そのトイレはどこかって聞くのに、その、こんなに緊張してこう聞かなきゃいけないぐらい緊張するんだっていうのを初めて知ったんですって。
で、見える人だったらそんなに考えないで人に聞いちゃうって、逆に「トイレどこですか」って、見え、トイレの前で聞くわけじゃないですか、私の場合は。普通はトイレがないとこで「トイレはどこですか」って聞くわけでしょう、見える人は。だから簡単に聞けちゃうけど、トイレの場所を聞くのにこんなにこう、どの人に声を掛けたらいいのかとかこんなに悩んで、思い悩んで、こんなに緊張して声を掛けなきゃいけないっていう気持ちがあるんだっていうことをすごい知ったんですって。
それがすごいショックだったっていう話をして、その子は本当それで、あ、障害があるってこういうことなんだって知ったっていうのを教えてくれた子がいたんだよね。で、それもその子にとっての気付きだけど、私にとってもそれで友達が1人できたんで、あの、それが最初だったんです、その子と。その大学でできた最初の友達が、そのトイレの子だったんですけど。
で、次の、次にできた子が、その子は授業が結構一緒になる子で、その子もね、割と、あの、おとなしい子だったんですけど、いつも、一緒に、席がそばになったことがあってきっかけで、すごく仲良くなったんですけど。その子が、私といつもよく腕を組んで歩いてたら、ある他の全然関係ない友達から、「何とかさんは偉いね」って、「いつも手助けしてあげて」って言われたときに、ものすごい腹が立ったんですって。
そんな気持ちを一度も持ったことがない。普通にお友達と思って腕を組んで歩いているだけで、たまたまそれが私にとっては必要だからそうしてたけど、お友達だってずっと思っていたのに周りからそんなふうに見られているんだと思ったら、その、そのことに対してものすごい悔しくて。後で話してくれたんですけど、すっごい怒ったらしいんです。
で、怒られたほうの子は、それが自分が何で怒られたかが分からないんですって。その、褒めたつもりが怒られたみたいな感じで。でも、その子にとっては障害がある人っていうのに対しての差別感っていうのをそこで知ったって、周りの目っていうか、自分に対して向けられた目で知ったって。この2つの話が多分あって私もそれは後から聞いたんだけど、そういうふうにして多分障害のある人に接する障害のない人って、すごいいろんなことを学ぶ機会になるんで、だから障害のある人は、もう堂々とキャンパスにいたほうがいいと思う。自分のためだけじゃないから、存在が絶対。
インタビュー15
- 20年以上前の当時は、点字受験を認めているところしか受験せず、時間も“点字受験イコール1.5倍の時間延長”とほぼ決まっていたので、事前に大学側と交渉することはなかった
- 点字受験が可能かどうか1件1件電話で問い合わせて、受験できるところを受けた
- 自分の進学先はもともと既に視覚障害の方が在学されていて、自分の入学に際しても、大学側は四苦八苦しなかった
- 母校で行った教育実習では、ひとクラスを受け持って、合唱の指導も行った。最終日に生徒全員がメッセージを吹き込んだカセットテープをくれた
- 盲導犬の話を含めて自分の経験を語ったことがあり、これを聞いた人からの講師としての講演依頼をきっかけとして、いろいろな学校で有償で話をしたり授業をしたりするようになった
- 大学時代の友達の話から、障害のない人が、障害のある人に接することは大きな学びになることだと思った。だから、障害のある学生は堂々とキャンパスにいたらいいと思う
- 学校を動かすといった大がかりなことよりも、直接教員のところに行って質問をし、個別でやりとりをする方が心地よかったので、自分はそんなやりとりを続けていた
- 親の方針で高校生からボランティアとのやりとりは自分でやっていたので、大学でも困らなかった。ボランティアの人とは子どもや孫ほど年が離れており、大切にしてもらった
- 当時大学の教科書を読んでもらうのに地域の対面朗読のサービスを使っていたが、その最後の時間で、料理本のレシピや一人暮らし先に届く私信などを読んでもらっていた
- 大学で一人暮らしを始めたが、最初は電話や暖房器具もなくてそれを揃えるところから始めた。スープを作ろうと思ってコショウを一瓶分いれてしまったこともあった