今回インタビューに答えた人は、自分で体験したからこそ、他の障害学生や、これから大学で学ぶことを考えている人たちに伝えたい思いを持っていました。
チャレンジすること・あきらめないこと
多くの人が、最初から諦めないことや、失敗を恐れずにチャレンジすることが大事だと話しています。次の肢体不自由の女性は、最初は不安が大きかったが、実際に大学に飛び込んで、出来るようになったことがたくさんあったことを話していました。
内部障害の男性は、人と違うことをするには勇気が必要だが、その一歩を踏み出す勇気を持つことが大事だと話していました
盲ろうの男性は、自分のためだけではなく、将来、障害をもちながら学ぶ他の学生のためにも、諦めないでほしいという話をしていました。
肢体不自由の男性は、これからの人たちには、できるかできないかではなく、やりたいことで先のことを考えてほしいという話をしていました。
自分のことを伝えること・助けを求めること
「合理的配慮をめぐる大学との対話」のテーマのなかでも、大学在学中に、自分に必要なことが分かったり、自分自身のことを周りに伝えられるようになったと話した人がいました。ここでも、複数の人が、自分のことを周囲に伝え、助けを求める大切さについて話しています。
大学で障害学生支援にかかわっている聴覚障害の女性は、自分自身の反省から、大学で様々な場に参加するために積極的に支援を使うことや、支援を使うために自分に必要なことを周りに伝えることが大事だと話していました。
次のうつ病の女性は、社会人を経て看護系の大学院に入った際、グループワークが辛かった経験から、自分自身ができないことを周囲に伝えたほうがいいという話をしていました。
次の発達障害の女性は、困ったら学生相談室などに相談してみると、自分自身を理解することにもつながるという話をしていました。
大学在学中に事故で車椅子になった男性は、助けてもらうことが多いからこそ、自分の態度が大事だという話をしていました。
また、視覚障害の女性は、他の学生にとっても障害のある人と接することは大きな学びになるので、障害をもちながら大学で学んでいる人には、堂々としていてほしいと話していました。
無理をしないこと
チャレンジすることや諦めないことが大事だと話した人がいた一方で、無理をしないことを伝えたいと話した人も複数いました。周囲と違うというだけで頑張ることを強いられると、やはり誰でも疲れてしまい、時に大きなダメージがあるかもしれません。インタビューでは、自分で体験し、苦労を知っているからこそ、他の障害学生に無理をしないでほしいという先輩からのメッセージがありました。
次の肢体不自由の女性は、とにかく本人が苦しくならないようにしてほしいという話をしていました。
今回インタビューに答えた人たちは、20代~40代と幅があります。障害学生の数はこの20年で大きく増え、支援体制は進んだと思われがちです。しかし、一つ前の世代の障害者運動によりある程度道が拓かれていた現在40代の人たちは、支援体制が進んだなりの悩みもあるのではないかと話しています。支援があることで、問題点が表面化しにくくなる(「見晴らしが悪い」)と語った人もいました。
考え方を変えてみること
障害をもちながら学生生活を送ることや、自分自身と向き合うことは、時に大きな壁にぶつかるかもしれません。チャレンジしたり、無理をしないというメッセージがあるなかで、考え方を変えてみることも大事だと話した人がいました。
次の発達障害の男性は、世の中は、発達障害の「生きづらさ」にスポットを当てたがるが、逆に生きやすい面もあるという話をしていました。
在学中に体調を崩し、大学卒業時に診断が分かった内部障害の女性は、他の人と同じでいられないことについて、逆に楽になったという思いがあることを話していました。
人間関係を築くこと
「大学生活で得たこと」のテーマでも、人との出会いについて触れた人が多くいましたが、他の障害学生に対しても、人間関係を築くことについてメッセージを送った人が複数いました。大学は多様な人に会える機会で、中には、その後一生付き合うような人間関係が生まれるかもしれません。
次の肢体不自由の男性は、大学では多くの辛いことがあったが、友達のおかげで卒業できたという話をしていました。
次の発達障害の男性は、一人ではないことを伝えたいと話していました。
次の肢体不自由の男性は、制度に囲い込まれて文句があるけど言えないという状況になったときには、他の障害をもつ他の人に会ってみるといいと話しています。
大学などで学ぶこと
今回インタビューに答えた人たちは、大学を、単に知識を得る場だとは捉えていませんでした。それぞれの体験は多様ですが、大学で過ごす中で、かけがえのない人との出会いがあったり、広い視野を持ったり、また障害のある自分自身を理解し、自分を説明し、助けを求められるようになった人もいます。「大学は、“世の中って思ったより広い”と感じられる最初の場所」と話した人もいました。
障害学生支援の仕事をしている次の肢体不自由の男性は、大学こそ障害のある人にもってこいだという話をしています。
通信制で学んだ肢体不自由の男性は、障害のある学生にとって、大学は自分のペースで学ぶことによって自分を見つめ直せる場になるという話をしていました。
次の視覚障害の男性は、ものを学ぶだけでなく、自分がこうあってほしいと思うことを社会に伝える手段を学ぶのに、障害のある人に、大学院を勧めたいという話をしていました。
2021年1月公開 2022年4月更新
認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。