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インタビュー時年齢:47歳(2019年5月)
障害の内容:視覚障害(全盲)
学校と専攻:大学・社会学部(2016年度編入学)、大学院(2019年度入学)
首都圏在住の男性。小学校入学時は普通学校だったが、4年生から特別支援学校で過ごした。高校卒業後はあんま・はり・灸の3つの資格を取り、医療機関で働いた。その後思うところがあり、視覚障害者に関する障害福祉の研究をしたいと思って、大学に編入学し、現在は大学院に通っている。幼少のころからずっと音楽に親しみ、一時はプロを目指したこともある。現在は、一人暮らしをしている。
語りの内容
目をつぶって、ここからここまで僕が欲しい、関心事がある、論文で引用した文章が書いてあるっていうのは見えませんからね、全部スキャンしないと駄目なんです。
――基本的には、じゃあ全部スキャンをしているっていうような感じ。
例えば、教官、まあ、教員が、あの、ここからここの範囲を引用して、何かレポートを書いてこいって言われた場合は、そこからそこのページを、あの図書館のスタッフにちょっとお願いをして、えー、分かるように紙で挟んでもらって、その範囲をスキャンすることはできるんで労力は楽でね、そんな大変じゃないんですけど、あの、論文の引用をするときっていうのはどこに何が書いてあるかは最初は分からないので、特に目次っていうのは、もう、あの点・点・点・点・点・点で何ページ、点・点・点・点・点、何ページって書いてあると、それは文字として読まなかったり、その順序どおり読んでくれないので、もう目次のページ、ページは何が、どこのページからどこのページまでが、どういうタイトルのものが書いてあるかっていうのは解釈できないんです。
――じゃあ、もう本当に全部をコピーをして、スキャンして、OCRに掛けて、全体確認して自分が必要なところを特定するっていうような、そういう作業になるっていうことですか。
そう。そうなんです。全くそのとおり。
――すごい労力ですが、でもご自身としては…、その「マラソンのようで楽しい」という今言葉が出てきたんですが、それは本当にご自身にとっては必要だし、楽しい時間っていう感じですか?
ですね。楽しいし、嫌じゃ、嫌だと思ったことがない。で、面倒臭いなとは思うことはあるけど、もっと、目次だけでも何か、そういうパソコンで読ませるようなデータ、ワードデータでどこか提供してくれないかなと思ったりしますが、ないし。まあ、一部の書物に関しては、あの、WordデータないしテキストデータないしPDFデータでも、あの、頂けるところはありますが、それは著者が許可していないと駄目なんですね…。なので、非常にそういうところは苦労するとこなんだと思います。そういう意味で、もしかしてですね、僕はこれを楽しんでますけれど、もしこれを労力だと思う視覚障害者がいたら、ものすごい壁だと思います。面倒臭いです。うん。だから、これは、たまたま僕は楽しんでますけど、これは改善したほうがいいところ。何とか、その、それも大学側ないし、えー、出版社側ないしが、そういうところをですね、もっと知っていただきたいなとは思うのですが、それを声を大にして言っていく方は今までおらっしゃらないようです。いらっしゃらないようですので。
インタビュー17
- 特別支援学校の高等科にあんまマッサージ、はり・きゅうの資格が取れる課程があった。自分は行きたいと思っていなかったが、親に泣きつかれて資格を取った
- あんまや鍼灸の仕事に満足していたが、他の視覚障害の方たちが不満を抱いているのを知り、自分だけ幸せじゃいけないんじゃないかと思い始めたのが大学進学のきっかけだった
- 自分がこうあってほしいと思うことを社会に対して伝える手段として、思いを形に残せるようにするために、大学院の門を叩くことをお勧めしたい
- 学部は支援センターなどが多いが、大学院は必ずしもそうではない。支援の窓口や専門のスタッフを各大学院に置いてもらえると、障害者の研究者が生まれやすくなると思う
- 本をスキャンしてデータで読む作業は、ものすごい労力がかかる。最初から書籍データを入手できる場合もあるが、それを著者が許可していないこともあり、改善が必要だと思う
- 通信制の大学でたまたま会った教授に惚れ込み、その教授に認めてもらおうと思って一生懸命学んだら、その教授のゼミにも招待されて、それが大学院進学のきっかけになった