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インタビュー時年齢:41歳(2019年1月)
障害の内容:内部障害(逆流性腎症による慢性腎不全、人工透析治療を受けていた)
学校と専攻:短期大学・看護学(1995年度入学)、大学院・看護学
近畿地方在住の男性。両親、兄の4人家族で育った。0歳で腎疾患の診断をされて、15歳から人工透析を開始した。透析をしながら働く看護師の言葉に励まされ、看護師を志す。大学では、周囲からサポートされながら生活した。就職活動は難航したが、理解ある医療者と出会い、働く場を得た。その後、慢性疾患看護専門看護師(CNS)になった。数年前に腎移植を受けている。
語りの内容
もちろんその看護師という仕事をしていく中でも自分の経験は、患者さんのためには少しは貢献しているのかなって思いながら仕事はしておりました。
ただ、やっぱりより多くの人に、知っていただきたいなっていうのと、自分の経験でよかったら、力になれないかなっていうように思っていましたので、それがどういったかたちで、広げることができるのかなって思ったときに、出会ったのが患者スピーカーバンク(当事者体験を活かして話をする人たちの集まり。研修会などを行っている。)っていうところだったんですね。
それは東京だったんですけども、ちょっと勇気を出して行ってみようかなと思って行ったら、本当にそこでやっていることと、自分のやりたいことが本当にもうリンクしましたので。で、ぜひこれをやってみたいというように思ったので、そこでやっていきました。
そこには多くのやっぱり仲間が来ていましたので、全員が同じ思いを持っていたんですね。病気は違えども、やっぱりみんな向いている方向は一緒だったような気がします。
なので、そこで、あ、みんなも頑張ってるし僕もやってみようかなって背中を押してもらったっていうところがあるので、そういった集まりに参加できたのは本当にラッキーだったなっていうように思います。はい。
――その「同じ方向を向いている」というか、そこをもうちょっと詳しく教えていただいてもいいですか。
あ、分かりました。まず、多くの方がですね、今の自分を何かに活かせないかなっていうところと、いろんな病気を持っていらっしゃる方が、やっぱりつらい経験であったりとか、いろんな葛藤の中から今があると思うんですよね。で、その中で今までのその経験っていう部分をやっぱりひも解いていかなければ語ることはできないので、そこをやっぱり、そこを向き合っていきたいっていう思いはみんなの中にあったんです。
で、患者スピーカーバンクの中によく…、(これまでの自分の経験をひも解くという)「棚卸し」をするっていう作業が正直しんどいんですね。私もしんどかったです。そのときに、その今、○さん(患者スピーカーバンクの代表の名前)が今おっしゃっていたことが、しんどいよね、僕もしんどかったよ、でも、やりたいこと何? そこをやっぱ向き合わないと次、進めないよね、強制的じゃないよ、これは、時間かかってもいいから、少しずつ向き合っていこうかっていうところで、やっぱりみんなはいろんな経験をしていく中で、閉ざしていたものとか、ふさぎ込んでいたものを少しずつ、明らかにしたいとか、扉を開きながら、それを何かのかたちで伝えていくっていうところが全員共通していたんですね。
なので、自分だけが立ち止まるんじゃなくて、みんなも立ち止まっていく中でちょっとずつ背中を支え合いながらいったっていうところが同じ方向を向いていたのかなっていうふうに感じました。はい。
やっぱり全員が、もう一個共通していたのが、病気とか障害があって何が悪いのっていうところは全員にやっぱり共通していたんですね。で、それは僕自身の中にもずっと、ちっちゃい頃からあったんです。みんなと同じようにやっているしっていう思いがあったんですが、自分1人で思っていたことなので、それが正しいかどうかも分からない中で時間だけが過ぎていったんですね。
そういった中で、そういう人たちと出会えたっていうところが、自分の考え方って間違ってなかったんかもしれないな、いろんな人が思っているんだから、仲間がいるんだなっていうのが本当に、自分の支えになったのかなと思います。はい。
インタビュー05
- ある看護師に「そこら辺にいる15歳のガキ」だと言われ、「自分は人と違う」という思いから解放された。彼自身も透析をしており、彼のようになりたいと思った
- 腕にシャント(透析用の血管)があるので、患者さんを移動させる「体位変換」が教科書通りに出来なかった。先生や友人と一緒にシーツや枕を使いながらできる方法を考えた
- 仕事をしていく上では重要なことだと思い、夜間透析をしていると履歴書に書いたところ、「病気をしている人が看護師なんてありえない」といわれた
- 面接では「看護師は無理」と言われ続け心が折れかけたが、ある病院で「透析していることが患者に関係あるの?」と言われ、初めて普通に志望動機を聞いてもらい、そこに就職した
- 病気や障害をもちながら大学生活を送るのは不安になるし、人と違うことをするのは勇気が必要だと思う。だが一歩踏み出す勇気を持てたら、仲間が増えて輪が広がっていく
- 色々悩みながらやっているので、押しつけるようなアドバイスはしてほしくない。みんな変わる力があるが、変わるタイミングは人それぞれ違うので、待っていてほしいと思う
- 「無理してない?」など、周囲の教員から声をかけてもらうことで、見ていてくれているなという思いになった。何かしてもらうよりも、声をかけてくれるだけがありがたかった
- 自分の体験が誰かの力にならないかと思い、当事者の立場から話をする団体に勇気を出して行ってみたら、そこで多くの仲間に会い、仲間との共通点を見いだせた思いだった
- 友人には「腎臓が悪いので人工透析をしています」と伝えていた。看護専攻だったので、周囲もある程度病気や治療を分かっていて、高校の時より周囲に伝えやすかった
- 友達には、合コンを透析のない日に調整してもらったり、体調がすぐれずに出られなかった授業のプリントをもらったりしていた。飲食について、アドバイスをくれる友達もいた