化学療法は、がん細胞を破壊するために抗がん剤(細胞毒性薬)を使用する治療です。化学療法の狙いは、正常な組織へのダメージを最小限に留めつつ、がん細胞に最大のダメージを与えることです。女性の乳がん患者は、化学療法を受ける可能性があります。
・がんを縮小させるために手術前に行う化学療法。これは、術前化学療法(または一次化学療法)として知られています。化学療法が成功し、がんが小さくなれば、乳房の一部の切除だけで済み、乳房の全摘切除を回避することができます。
・医師が、がんの再発のリスクがあると判断した場合、手術後に行う化学療法。これは、アジュバント化学療法として知られています。手術中に採取した組織の病理報告を検討してから、アジュバント化学療法の決断をします。がんが大きい、高悪性である、リンパ節に広がっている、トリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、またはHER2が発現していない乳がん)である、または、HER2陽性(ヒト上皮成長因子受容体2)である場合は、通常、手術後に化学療法を実施します。
ときに、切除した組織に、オンコタイプDX検査(遺伝子発現解析検査、遺伝子発現分析検査、または、遺伝子分析としても知られる)を実施することは、医師が化学療法の有益性と将来的ながんの再発の可能性を見極める手助けをします。患者がHER2陽性(HER2陽性の腫瘍は予後が悪く、ハーセプチンはこれらの女性患者の無病生存率を改善するー詳細については‘ハーセプチン’を参照のこと)の場合、化学療法はまた、ハーセプチン(トラスツブマブ)と併用されることが多いです。
・転移または再発した乳がんに対する治療として
化学療法薬は、通常、静脈注射または錠剤として、通院患者に投与されます。静注による化学療法は、1セッションの治療として与えられ、通常は2~3時間持続します。その後、2~3週間の休薬期間がおかれ、この治療による副作用から身体が回復できるようにします。化学療法の全過程が終了するのに4~6か月かかると考えられます。
乳がん治療には、多くの種類の化学療法薬が使用され、それらはしばしば組み合わされます(化学療法レジメン)が、通常は約3種類の化学療法薬が併用されます(化学療法薬のリストと乳がんの最も頻度の高い組み合わせについてはCancer Research UKを参照のこと)
ここでは、化学療法の経験とその副作用について述べてられています。
多くの人は、すでに化学療法とその副作用について聞いたり読んだりしていて、この治療を受けることになったときに抱いた不安や懸念について述べていました。何人かの人は手順について述べており、快適な病院の環境と協力的なスタッフについて話す人も多くいました。ひとりの女性は、炎症性乳がんで、数週間にわたって継続して化学療法を受けており、その経験について話していました。
テスは33歳で診断を受け、その当時妊娠していました。妊娠中に化学療法を受けましたが、副作用はほとんどなかったそうです。
化学療法の影響には個人差があります。わずかですが、まったく、もしくはほとんど副作用がなかったという人もいました。そのうちの何人かの女性は治療中も働き続けていました。
しかし、多くの人たちにとって、化学療法は副作用によるつらい経験であり、その期間は働くことはできなかったと述べている人たちもたくさんいました。化学療法の一般的な副作用は、倦怠感、虚弱、吐き気、嘔吐、下痢、脱毛、体重変化、味覚変化です。大抵、一時的に複数の副作用を体験していました。多くの人が気分の落ち込み、疲れ、活力減退または衰弱を体験したと言っており、何人かは、一度何が起きるかを理解すると、治療を受け入れやすくなったと話していました。
吐き気と嘔吐もまた、何人かの女性たちにとって共通した副作用でした。他にも体重増加または減少と、味覚変化について話している人もいました。
脱毛をひき起こす化学療法もあります。帽子をかぶる頭部冷却法(コールドキャップ法)が抜け毛に良いとする女性が数名いますが、効果がない女性も多いようです。
脱毛した女性の中には、頭を剃った女性もいます。また、その時はかつらやスカーフを被ったとする女性もいます。頭に、刺すような痛みやざわざわと焼けつくような感覚を訴えている女性もいました。じっとしていられなかったと語る人もいます。
化学療法による口腔カンジダ症を挙げる人もいれば、化学療法の副作用としてはまれな膀胱炎を訴える女性もいました。
更年期症状を訴える一部の女性もいて、そのうちの一人は数種類の重度の副作用のために、化学療法の継続を拒絶しました。医師は、さらなる治癒の可能性が副作用に勝ると信じる場合に、化学療法を実施します。患者には良い点と悪い点を熟考する機会が与えられます、そして、多くの女性が、一時的な副作用の辛さよりも治療による恩恵を強調しています。また、多くの女性は、つらい時期の、家族や・友人、病院職員や他の患者からのサポートに勇気づけられています(サポートの源を参照)。
ジャネットは、乳房切除術と、化学療法、および放射線治療が必要であると告げられました。彼女は、腫瘍が縮小し、乳房切除術を避けられるのではないかとの希望の下に、術後ではなく術前に化学療法を受けることができないかを主治医に聞きました。主治医は、彼女の場合には、術前の化学療法が可能であろうと同意しました。
数名の女性は、化学療法中やその後に合併症を経験したと述べています。イングリッドは、化学療法中に重度の合併症を発症し、救急救命に行き、両側の肺塞栓症(肺の血栓) の治療を受けました。ジリアンは治療終了直後に、ウイルス感染で数週間入院しました。
2017年10月更新
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