治療の副作用の中でも、脱毛というのは、女性にとって特別につらい副作用の一つとして語られていました。ここでは、脱毛がどのように起きたか、かつらや帽子などの工夫について、インタビュー協力者の方々が語った脱毛に関する体験を紹介します。脱毛は頭髪だけではなく、睫毛や眉毛、鼻毛など体中の毛が脱毛し、中には顔のうぶ毛がなくなり、化粧乗りがよくなったという声もありました。ユーモアあふれる夫との会話に慰められたという体験者もいました。
このように抗がん剤を行ったあと、大体2-3週間で抜け始め、多くの人たちがショックを受けていました。髪の毛の抜け方は、ほぼ共通していましたが、髪の毛の残り方などは抗がん剤の種類によって多少異なっているようでした。EC療法(※)ではすべて抜けたが、タキソールでは下の方の毛が残ったという体験談もありました。頭髪の脱毛は外見の変化を伴いますので、外出や人に会うことを避けたいという気持ちになった人も多く、周囲の支えやウィッグやバンダナを活用することで、気持ちが前向きになったそうです。
※EC療法とは抗がん剤の多剤併用療法で、ファルモルビシンの一般名塩酸エピルビシン(E)とエンドキサンの一般名シクロホスファミド(C)の頭文字をとった略称です。
インタビューを受けた人の中には、ウィッグを使わずに過ごした人たちがいました。ある人は、ウィッグは持っていてもなぜか使うことに抵抗を感じたそうです。また、がん体験者の友人に、「値段が高いから自分はウィッグは要らない」と言ったところ、周りの人のためにウィッグを使うよう助言された人もいました。職場にウィッグを着けて行っていた人が当時を振り返って、自分以上に周囲の人たちは気を遣っていたのでは、と語っていました。
かえってウィッグや普段被らない帽子を楽しんだという人たちも少なくありませんでした。しかし、ウィッグは決して安いものではありませんし、自分に合うものを探すのは一苦労です。経済的な負担やウィッグ選びが難しく何回も買い替えて大変だったと話す人たちもいました。ある女性はレンタルのウィッグを活用したそうです。また、形だけでなく、縫い目が頭にあたって気にならないような快適な帽子を見つけることに苦労した人もいました。
髪の毛が抜けた後に、頭部の皮脂のにおいが気になったという人もいました。
インタビューに協力した人の中には、男性乳がんの体験者がいますが、男性でも抜けたときはいい感じがしなかったと言います。
抗がん剤が終了して半年から1年で、多くの人たちがウィッグを外して地毛デビューをしていました。術後だけでなく、術前にも抗がん剤をした人は1年半くらいウィッグを使っていたということでした。彼女は髪の毛が新たに生えてきたときに、希望を感じ嬉しかったと話していました。
このほか、再発抗がん剤治療に関連した脱毛の体験は「再発・転移の治療」をご覧ください。
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