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インタビュー時:59歳(2016年2月)
関係:慢性の痛みを持つ59歳の女性(本人インタビュー29)の夫
東海地方在住。娘のサポートを受けながら妻と二人暮らし。自分が運転していた車の事故で、同乗していた妻は頸髄を損傷、不全四肢麻痺となった。受傷後半年を経過したころから下半身の灼熱痛、手外側に物が触れただけで痛みを感じるアロディニア、ひどい腰痛などが現れ現在も続いている。13年間、妻と共に痛みと麻痺と闘ってきた。現在は、慢性痛の患者さんを支えたり、そのための医療の改善を目指したりする任意団体を立ち上げ活動している。
語りの内容
で、あと、うーん、痛みに関して接し方で、気をつけていることは、痛みには共感するんですが、共感はするんですが、それ、ある線を越えて自分の中へは入れない。絶対に女房が、あの、痛がっていてもそれを想像、自分では想像しない。想像しないようにして心を閉ざして、ある面では閉ざして無視して客観的に、苦しんでても見るようにしてます。
どういうきっかけがあったかというと、女房、今は、あの、排便も自立していますけれども、退院した当時は、えー、…女房がなかなかうまくいかなくて、まあ便秘状態になってしまうと、自分もなってしまうということに気がつきました。自分が便秘なんかなったことないんです、男だし。女房が出ないと自分までなってしまうんです。変ですね、人間てね。自分もなんか同じ苦しみを味わっちゃうんですね。要は、なんか同化しちゃうと自分の体にも悪影響があるというのをわかるので。えー、もう、だから共感は大事かもしれないけど、何ていうんだ、自分の体の中というか、心の中に、えー、女房の苦しみを一定以上は絶対入れないように、というふうに心がけています。だから、痛がっているのは痛がっているんだけども、それは客観視して。えー、自分ではこう、想像して、「ああ、こんなに痛いんだろうな、こう言っているから」ということは絶対やらないように、その、気をつけています。
それと、なるべく痛みの話は避けるようにしてます。女房も、めったに言いません、痛いというようなことは。態度ではわかることありますけど。「あ、痛いんだね」とか、そういうことはこっちからは言わないし。まあなるべくなら、そうっと、なんかペースが守れるように、えー、まあ支えるようにしなきゃいけないと思いますが。そういうとこが工夫しているところかな。
家族インタビュー05
- 交通事故で頸髄損傷になって半年後から不思議な痛みが出始めた。電気毛布を使っているとき「足が焦げていないか、確かめて」と妻に言われ、麻痺がある足の痛みに気が付いた
- 医療者に妻が痛みを訴えても、相手にされなかったのはショックだった。精神的な病気にならないよう、周りの者が痛みを理解してフォローしなくてはいけないと思う
- 痛みがあると感情がとげとげしくなるものだが、妻は痛みがあると逆にハイテンションになって明るく振る舞う。娘はそれを見て「お母さん、今痛いんだね」と気づいていた
- 痛みには共感しても、妻の苦しみを自分の心の中に一定以上入れないようにして、痛がっていても客観視して、自分ではその痛みを想像しないようにしている
- 頚髄損傷の妻が足の痛みを訴えたとき医療者は相手にしてくれなかったが、インターネットで同様の痛みのある人が結構いることを知っていたので妻の訴えを疑うことはなかった
- 火災報知器が火事を知らせて鳴るのが正常な痛みだが、慢性痛の場合はそれが故障しちゃって鳴り続けている状態。そのことがわかると被害が小さく済む
- 女房は痛みは取れていないが共感的に支えてくれる医師に出会えた。痛みのために自ら命を絶つ人もいるが、医療者の接し方が違っていたらそんなことにはならなかっただろう