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診断時:58歳
インタビュー時:60歳(2010年4月)
インタビュー家族03 の夫
共働きの妻と息子の4人暮らし。大手小売業の販売促進業務をしていた2007年頃、会社の同僚から物忘れを指摘され、受診する。本人に自覚症状はなし。最初の市立病院では「中等度の若年性アルツハイマー型認知症」、大学病院の専門外来では「軽度」と診断される。その後、配置転換で作業的な仕事に異動し、2009年の定年まで勤め上げた。現在、市立病院と大学病院に通院中。週1、2回家族会で事務仕事を手伝う。
語りの内容
―― あの、最初に、そのご病気のことっていうか、何かちょっといつもと違うなとか、あの、変だなっていうふうに感じたのはどういうことでしょうか。
いや、おれが感じたんじゃないんですよ。……本人はそんなに感じてないんですよ。ただ、周りから、
ちょっと、ま、忘れっぽくなってねー、なんつって。えー、自分では、そんなに、あの、ようするに、何ていうの、自覚症状として持ってないわけですよ。持っていたら、自分でも、ま、心配すると思うけど(笑)。ま、何だろうな、人から言われて、あそうかな、なんて。で、ほかのやつにおれが、忘れっぽいって言われんだけど、どうだ。「ああ、おれも、ちょっとそう思ったことがあるよ」なんて言われてさ。だんだんだんだん、これで、ちょっとそうかなとか。でもね、あの、心配してもしょうがないじゃないと、正直言って(笑)。それがね、認知症とか、ま、そういう言葉すら知らないときですからね。
まあ、……よく言われましたよ。あの、忘れ、忘れないようにするには、忘れちゃいけないことはメモしとけって(笑)。それは、それは、分っているんですけど、なかなか、その都度その都度なかなかできるもんじゃないじゃないですか。優先順位がついちゃったりとか、そうするとね、えー、例えば、1から10までだったらば、8番目ぐらいのものは忘れちゃうとかさ。ま、そういうことなのかなと思いながら。ま、病気という意識があんまりなかったですよね。
やっぱり、何ていうのかな、やっぱり、その日とかそのときだとか、その場面だとか、その人だとか、それ一つ一つによって、やはり考える、頭ん中でこう浮かんでくるものっていうのが、全部違うじゃないですか。ま、その辺は、何って言ったらいいんだろうな、…そっちのほうが重くって、で、ちょっとしたことは、もう、忘れてもいいというぐらいの感覚になっているときもありますね。そうじゃないと、頭の中で、もう、整理しきれなくなっちゃうというところがあったから。それは、ね、ま、……今、認知症と言われていますけど、実際に、その病気とは関係なく、あれもやらなきゃいけない、これもやらなくちゃいけないというものが、まあ、いっぱいあったわけですよね。
インタビュー本人02
- ロールシャッハ検査や100からの引き算などをやった。「長谷川式」という名前は聞いたことがあるが、点数は覚えていない。画像検査で脳の萎縮が見つかった(音声のみ)
- 自分自身としてはアリセプトなど薬は飲まなくても間に合うと思っている。コミュニケーションをとることが病気の症状を軽減する効果があると思う(音声のみ)
- ウォーキングが病気の進行を抑えるかどうかは知らないが、リラックスできるし、愛犬と土手を走ったり、世話をしたりするのは自分にとってもいいことだと思う(音声のみ)
- 周りからは忘れっぽくなったと言われるが、自分では自覚症状がない。ちょっとしたことは忘れてもいいと思わないと、頭の中が整理しきれなくなってしまう(音声のみ)
- 診断を受けて、なんだかよく分からなかった。60歳で若年性と言えるのかなと。自信をなくすこともあるが、“いい加減な真面目さ”を信条にして、くよくよしないようにしている(音声のみ)
- 忘れっぽいという指摘を受けて、仕事の質を保つために、同僚にも再チェックを依頼したり、他の人の意見を聴くなど工夫することで、かえって仕事の視野が広がった(音声のみ)
- 退職後に家族会の事務の仕事を手伝っている。アルツハイマーでも気にせず、普通に話して仕事をさせてもらっている(音声のみ)
- 認知症の患者にも個性があるので、一定期間、同じ空間の中で過ごすうちに、同じような価値観を持った人が集まって仲間を作れるような場があるといい(音声のみ)
- 地元に小学校の同級生が大勢いて皆商売をやっているので、顔を見たいと思ったら行けば必ずいるし、集まってちょっと一杯やったりして、寂しさを感じることはない(音声のみ)