各種サービスの利用

医療的ケア児とその家族が、保育所、放課後等デイサービス、児童発達支援、居宅介護など、様々な制度やサービスを利用申請する際には、行政と関わります。
また医療費や移動に必要な介護タクシー利用、バギーや座位保持椅子の作成時に助成を申請する時も、行政と関わります。自治体によって、サービス内容や助成の範囲は様々です。
医療的ケア児の数が増えているため、医療的ケア児とその家族が利用できる制度も拡充されていますが、高齢者の介護保険制度と比べ、まだまだ制度の不足を訴える声もあります。(就学や教育については、就学相談・学校の選択学校での学びなどのトピックを参照してください)

訪問型サービス

在宅療養を支援する医療福祉に関するサービスには、訪問診療、訪問看護、歯科診療、PT(理学療法士)やOT(作業療法士)が訪問するリハビリテーション、自宅で子どもの発達を促す居宅訪問型児童発達支援などがあります。
住んでいる地域でどのように医療福祉に関するサービスを探し、利用したのでしょうか。

お住まいの地域によっては医療的ケア児対象の訪問看護など、サービスを提供する事業者を探すことが困難なケースもありました。

次の方は訪問リハビリを受け、専門家の視点でお子さんに必要な運動や生活のアドバイスを受けられたことで、子どもの成長を感じています。

療育(発達支援)

障害のある子どもの発達を促し、日常生活や社会生活を円滑に過ごせることを目指し、障害の程度や特性に合わせてさまざまな方法で支援を行うのが療育(発達支援)です。
乳幼児期は児童発達支援等において療育を行い、就学後には放課後等デイサービスに通うことで療育が受けられます。施設に通い運動リハビリや遊びを通じた知的育成などを行う以外にも、居宅訪問型児童発達支援もあります。

次の方のお子さんも療育施設に通園しましたが、常駐看護師がいても、親の付き添いが求められ、登園の日数や時間が制限されていたそうです。

保育園・幼稚園

保育園や幼稚園に通園させ、同年代の子と過ごす時間を希望する方は多いものの、看護師配置や子どもの安全確保などの問題で断られるケースも多数あります。
保育園に入園できず就労を諦めた人や、保育園に入園させるために就労時間を増やす必要があるため、子育てとの間でジレンマを感じているという人もいました。
医療的ケア児支援法の成立で、保育園や幼稚園での受け入れ体制を整えることが自治体の義務とされ、今後、受け皿の拡充が期待されます。
ここでは保育園に通園した方のお話をご紹介します。

次の方のお子さんは腹膜透析をしています。透析を始めた当初、仕事復帰はありえないと思っていましたが、医療的ケア児の受け入れを積極的に行う自治体にある保育園に通うことができて幸運だったと、おっしゃっています。

次の方は、父親です。気管カニューレを使う娘が保育園に通うことは全く想定していませんでしたが、同じような境遇の家族が保育園入園に向けて活動する姿に触発され、行政や議員に相談したところ、保育園入園が実現したと言います。

家族の一時的な休息

障害児をもつ家族を支える仕組みには、泊まりで子どもを預けられる「短期入所(ショートステイ)」と呼ばれる制度と、「日中一時支援(預かり)」の仕組みがあります。
どちらも在宅療養の合間にリフレッシュの目的で子どもを預けたり、きょうだい児の出産や入院、親の介護、ご自身の入院などで子どものケアができない場合に預けたりできます。
但し、「短期入所」は時期によっては予約が集中してなかなか利用できない場合や、突然の怪我や入院など、突発事案では利用の申請が間に合わず、計画的な利用しかできない難しさもあるようです。

この方がお子さんをケアしていた当時は、今よりも各施設の申込方法が窓口、電話、FAXなどのアナログな方式で、申請方法が全て異なっていたため、情報管理が複雑でした。最近ではHP上のネット申請やメールでのオンライン申込などを導入する地域もあります。

次の方は下の子の出産前、上の子の胃ろうのケアに対応できる施設を探していました。
当時通園していた障害児対象の幼稚園は、宿泊のお預かりも可能だったので、胃ろうのある子も預かれるように、先生方が胃ろうのケアに対応出来る研修(喀痰吸引等研修(実地研修))を受講してくれました。

次の方は、「日中一時支援(預かり)」と言われる制度を利用しています。
専門家から日常的に親子間の関わり、結びつきが強くなりすぎてしまうとの指摘を受け、支援事業所に預かってもらっている時間で自分の趣味を見つけ、用事がない時も積極的に利用して、親の時間と子どもの時間を分けるようにしたと言います。

サービスへの要望

現在の医療や福祉に対して利用者が抱える疑問や不足している支援など、今のお考えについて伺いました。子どもに日々、楽しむ機会を与えたい、同じ年代の子どもたちと交流させたい、きょうだい児へのサポートがほしいなど、さまざまな意見がありました。

次の男性は、現在、息子の入浴介助をしています。近い将来、お子さんの身体が大きくなり自分一人で入浴させるのが困難になるため、障害児向けの訪問入浴のサービスを望んでいます。
子どもでも地域生活支援事業という補助金の中で訪問入浴の制度を有する自治体もありますが、市町村の任意事業のため、住んでいる市町村によっては利用できない場合もあります。

次の方はお子さんが退院した10年前と比べると、今の医療的ケア児を取り巻く制度や資源は充実してきていると感じています。しかし、呼吸器をつけていても動ける子には使えないサービスが出てくるかも、と将来的な危機感を持っているといいます。

次の方は、卒後の行き先を検討したり、親が急病になってショートステイを探したりした経験をお話しくださいました。

手続きのオンライン化への要望

行政の申請手続きは、利用する前に様々な書類が必要です。年度ごとの申請や、継続でも窓口での手続きを求められなど、申請の手間に苦労する方が多数いました。手続きの簡略化やオンライン化などを求める声がありました。

障害者手帳の取得

障害者手帳には、身体障害を対象とする身体障害者手帳と知的障害を対象とする療育手帳などがあります。これらの手帳を取得することで、医療費の助成や補装具などの補助、公共交通機関の割引などの様々な支援が受けやすくなります。(詳しくは国立障害者リハビリテーションセンター「身体障害者手帳・補装具費支給制度について」を参照。)

行政による障害福祉サービスは制度上、手帳の取得を必須条件とはしていませんが、手帳があるほうが確実に助成や補助が受けられます。
但し、この手帳を取得できるかどうかについては、自治体により判断や対応がばらばらの可能性もあります。生まれてすぐに申請できる場合もあれば、自治体によって手帳取得までに時間を要する場合もあります。

2023年7月公開

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