前立腺がんの手術後に生じる勃起障害(ED)は、前立腺の非常に近くを走っている勃起神経や血管が、前立腺を摘出する手術で傷つけられたり、切断されたりすることによって起こる術後後遺症のひとつです。最近では、勃起神経温存術が可能になりましたが、病状によっては勃起神経を全く傷つけずに完全に温存することは難しく、実際に勃起するかどうかは術後になってみないとわからないこともあります。このような後遺症は男性にとって重大な問題であるばかりでなく、パートナーとの性生活に関わる問題です。
なお、放射線療法(外照射療法、組織内照射療法)や内分泌療法でも勃起障害は起こり得ます。それぞれのトピックをご覧ください。
ここでは、手術を受けた人たちが、手術を受けるか、性機能を温存するかという選択、勃起障害と男性性への思い、夫婦生活への影響、勃起障害への対策、術後のペニスの変化といった内容について語っていることをご紹介します。
性機能の温存と手術の選択
いくつかある前立腺がん治療の選択肢の中で、手術を選んだ人は、何より手術でがんを取り除くことを優先したという人たちでした。一方で、勃起障害となるリスクがあるから、手術を選ばなかったという人もいました。また、50代で前立腺がんと診断された人たちの中には、手術をする上で、勃起障害を問題にして、治療選択を迷っていた人たちがいて、自ら複数の治療法を検討して医師を探したり、神経温存術をしてほしいと主治医に申し出たりしていました。
勃起障害(ED)と男性性への思い
実際に勃起障害が起きて、それをどう受け止めているかは、人それぞれでした。尿漏れに比べれば勃起障害は不便さを感じないという人もいれば、数人の男性は手術をすれば何か障害が残るのは仕方ないと思ったそうですが、中にはやはりわかっていてもさびしいものだと話している人もいました。ある70代の男性は性機能が衰えても自分は元気に活動していて変わりないと思うと語っていました。
夫婦生活への影響
勃起障害などの性機能障害が起こると夫婦生活に影響をきたすことが考えられます。しかし、今回、インタビューに応じてくださった方々は、夫婦の関係性や夫婦生活についてあまり多く語っていません。特に手術を受けた人たちのパートナーの反応はわかりませんでした。ある50代の男性は子どもがいることや年齢的なことを理由に影響はなかったとしたうえで、自分の気持ちの上では焦りがあったと話していました。また、射精障害について話している人もいました。
勃起神経を温存する手術を受けた人たちの術後の性機能に関する語りは多くありませんでした。一人の50代男性は術後も勃起機能が維持されていると語っていました。また、別の男性は手術のあとで、勃起しても射精しないことがわかったと話しています。妻が亡くなっており、子どももいたため、術前に射精障害の説明がなかったのだろう、と話していました。
勃起障害への対策
実際、手術を受けて勃起障害が起こったときの対策について、ポンプ式の器具とバイアグラのことが語られていました。ある人は自分で使っているわけではありませんが、ポンプ式の器具が勃起を補助することについて語っていました。勃起神経を温存している場合にはバイアグラの効果もあるとされていますが、服薬について医師から話があったという男性は、副作用のリスクを考えて、使用には至らなかったそうです。
術後のペニスの変化
手術を受けることで感じたペニスの変化について、一人の男性が触れていました。
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